【第3話】 投資詐欺で2,300万円の損失を出した全貌を赤裸々告白

【第3話】 投資詐欺で2,300万円の損失を出した全貌を赤裸々告白

▼【前の話】第二話

社債説明会後の戦略とは

個別社債説明会でも、宣言通りクロージングは行わなかった。

その代わりに次の戦略として、“トレードの現場見学”を提案した。

「もし社債に興味をお持ち頂けたなら、Kの自宅兼オフィスに来て頂きたい。実際にどのようにトレードが行われているか現場をご確認頂ければ、より具体的に社債購入後のイメージも湧いてくると思います」

このように話を締めくくった。つまり、社債購入までにもうワンクッション工程を挟んだのである。

傍から見ると非常に面倒で遠回りに感じてしまう仕組みかもしれない。しかし、この自宅兼オフィスを見学していただくことには大きく2つの意味合いがあった。

1つはトレードしている現場を確認することで、どこで利益が生み出されているか具体的に知ることができる。それによって信用度をアップさせることができると考えた。

『投資』という言葉で一括りにしてしまうと分かりにくいのかもしれないが、投資というのは「利益が出ると見込まれるものに対してお金を出す」というのが本質である。

金融商品は、この原則に則っていなければそもそも成り立たない。

「利益が出るからリターンがある」

これは投資の大原則である。

しかし一般的な金融商品は、具体的に「どこで」利益が生み出されて分配が行われるか見えにくい。

たとえば、アフリカのダイヤモンドが採掘される鉱山に投資をすると仮定しよう。

その場合、証券会社や銀行が金融商品を作り利益分配する仕組みを作る。

しかし、日本にいたら本当にダイヤモンドが採掘される鉱山が存在しているのか確認するのは難しい。

鉱山があったとしても、本当にダイヤモンドが採掘される鉱山なのか?

ダイヤモンドが採掘されるとしてもきちんとした流通網があり、利益が生み出される環境が整っているのか?

そして現場を仕切っている経営者は有能なのか?

従業員が長く働いていくための環境が整備されており、長く収益が生み出される状態なのか?

年間どれくらいの利益が出るものなのか?

エンドユーザーが金融商品を購入するまでに、何社が中間マージンで利益を抜いているのか?

はっきり言って、これらを全て調べるのは困難である。

全体像を掴むことができないし、分かりにくいのである。

よく分からない金融商品をよく分からないまま営業マンのセールストークに乗せられて、よく分からないうちに購入してしまう。

自分達から社債を購入してくださる方には、そのような状況は避けていただきたかった。

Kの社債は利益を生み出している現場は一目瞭然である。

Kの自宅兼オフィスで、トレードをしている現場を見てもらえば、目の前で利益が生み出されているのが分かる。

「あなたにお支払いする利息は、ここから生み出された利益でお支払いをしているのですよ」と明確に伝えることができるのである。

Kの社債に関しては、できる限り透明性を持たせてお客様に安心感を与えたかった。

2つ目は、もしKの運用が失敗したとしても、自宅兼オフィスを知っていればKの身柄を確保しやすい。

Kの家を知っているということもお客様の安心に繋がる。こうして徹底的に安心感と信用度を高めることに努めた。

冷静に考えれば、大手証券会社と「どこの馬の骨とも分からない若造二人」を比べられたら、完全に信用負けしてしまう。

こちらは大手がやらない戦略で信用を勝ち得ていくしかない。

さらに個別社債説明会では、私はこのようにも付け加えた。

「もしここで社債を購入したいと思ってもここでは決めないで頂きたいです。社債はKの自宅兼オフィスを見学に来て頂いて、ご納得頂けた場合のみ社債を販売いたします」

かなり上から目線だが、私は双方の納得感を大事にしたかった。

この事業は、一人のお客様と長く付き合っていくことになる。基本的に売りっぱなしということはあり得ない。

そのため「長期的な付き合いができるお客様なのか?」というところもすり合わせるために、購入までの接触回数を意図的に増やしたのである。

当然、社債説明会の時に購入したいという方もいらっしゃったが、その方にもKの自宅兼オフィスに見学に来て頂いた。

「急がば回れ」

早く売りたい衝動を抑えて、お客様のために誠実に着実に事業を行うように徹底していったのである。

Kの自宅兼オフィスへの見学

Kの自宅兼オフィス見学は若干の不安はあったものの予想以上の成果をもたらした。

Kの自宅にはパソコンのモニターが4台あり、よくテレビに出てくるトレーダーの部屋と同じような光景であった。

モニターにはFXトレードのチャートが映し出されており、否応なしにトレードに対する現実味が増していく空間だった。

人は「よく分からないもの」に対して過剰に恐れの感情を抱く生き物だ。

特に投資初心者は分からないことが多いため、必然的に恐怖の感情が先行してしまう傾向にある。

Kのマンションは決してキレイなところではなかったが、取引現場を見てもらったことは、社債購入者に大きな安心感を与えたのだと思う。

トレードをしている現場を見て頂いてから「どうされますか?」と尋ねると、かなりの割合で「購入する」と返答してくれた。

あくまでも最終決定はお客様からで、こちらは背中を押す程度。プレッシャーをかけたり売り込みオーラを出さない。

最初から徹底したことは間違いではなかったと思った。

これで「何をどれくらいやれば社債が売れるか」を具体的に知ることができた。

この気づきは本当に大きかった。

後は、今までの一連の流れを繰り返していき、精度を上げていけば着実に成果が出ることになる。

私のモチベーションはより一層上がり、Kとの事業にさらに力を入れていった。 

実際にどれだけ社債は売れたのか

ここまでの話を読んで頂いた方の中には、実際にどの程度社債が売れたのか気になる方も多いと思う。

前回同様この記事をご覧頂いている方には、できる限り事実を述べていこう。

もちろん個人情報やどうしても出せない内容もあるのだが、実際に私がどのような数字を出してきたのか語っていきたい。

セミナーに集客して社債購入に至るまでどれくらいの成約率があったのか数字を出してみた。

仮にセミナーに10人集客したとしよう。

その中の約40%、つまり4人が社債説明会への参加を希望してくれた。

そして、さらにその中の約50%が、Kの自宅兼オフィスに見学に来てくれた。

自宅兼オフィスに来てくれた場合は、80~90%の成約率で社債を購入してくださった。

・投資セミナー ⇒ 個別社債説明会(40%)
・個別社債説明会 ⇒ 自宅兼オフィス見学(50%)
・自宅兼オフィス見学 ⇒ 社債購入(80%)

セミナー動員から社債購入までの成約率は15~18%くらいであった。

つまり、セミナーに10人集客すると1~2人は社債を購入してくれることが分かった。

数字が見えたら話は早い。あとは、これを繰り返すだけだ。

突然のブレイクスルー

ビジネス活動をはじめて半年が経過した頃から成果に大きな変化が出始めた。

今までは月に1~2回セミナーやランチ会を開催して、売れていた社債は毎月50万円~100万円ほどだった。

しかし、急速に社債の販売額が増えてきたのである。

その要因になったのが、既存のお客様の追加購入と口コミによる紹介だった。

今までコツコツと運用を続けていたことが認められて「こいつらなら信用できる」と思って頂けたのだと思う。

既存のお客様が追加で社債を購入してくださるようになった。

真面目にやってきたことが認められたようで本当に嬉しい気持ちになった。

追加の購入だけではなく、既存のお客様から口コミによる紹介も頂けるようになった。

今までの営業活動で一度も強引なクロージングをしてこなかったため、これなら安心して周りの友人、知人を紹介できると思って頂けたのだ。

事業立ち上げ当初から貫いてきたスタンスは、やはり間違っていなかったと思った。

時間が掛かるやり方だったが、長期的に考えたら一番効果的な方法だったと確信できた。

一気に数百万円単位のお金が動き始め、社債の購入額も一千万円を超え始めた。

ここからKとの投資事業は、急速に拡大していくことになるのである。

増え続ける粗利!成功を確信!

さらに見込みとなるお客様も増え続け、すぐに二千万円も超える勢いであった。

これが噂に聞く「ブレイクスルーというやつか!」と感激したものだ。

おそらく自転車の乗り方を覚える時と同じで、一度感覚を掴んでしまってからは、社債を購入して頂くのも一気に簡単に思えるようになっていった。

案の定、翌月には運用額も2,000万円目前まで迫り、急速に事業規模が大きくなっていた。

Kの運用成績も若干の波はあるものの、平均すると15%以上の月利をキープしていた。

事業が右肩上がりで成長しているのを実感した。

最初数万円だった報酬も、これから毎月コンスタントに50万円以上の収益が見込める状況になった。

今まで沢山の失敗を経験してきたが、ここにきてようやく実を結んだのだ。

半年間収益が低くて金銭的に苦しかったが、それも今月で終わりだ。

来月のコミッションからは月に40万円以上。

その翌月は50万円以上のコミッションが確定している。

しかも社債の購入も右肩上がりで伸びている。

このままのペースでいくと、数ヶ月後には上限の4,950万円に達してしまうのではないか?

嬉しい悲鳴とはこのことだ。早急に次の戦略も考えなければいけない。

ビジネス活動自体が楽しくて仕方がなかった。

それが2014年12月のことである。

「貧乏な年末も今年が最後だな」と感慨深くなった。

来年からは、今よりも広い家に引っ越して、行きたかったところに旅行でも行こう。

これで買いたい物も揃えることができるな。

拡大していく事業に、期待に胸は膨らむばかりだ。有頂天になるとは、まさにこの事なのだろう。

来年は1億円以上の運用ができるビジネスになっているかもしれない。

そうなると、自分の月収も300万円以上になる。大成功とは言えなくても、プチ成功者の仲間入りはできるだろう。

半年間コツコツと積み上げてきたものが身を結んだのだ。

ここからさらに飛躍していくイメージもできていた。

まだまだ課題はあるが、これは数億円規模の事業になると思った。

社債が集まって顧客が増えても、Kが運用する手間はさほど大きくはならない。

社債を購入してくれた方のコミッション管理やアフターフォローのために事務が1人必要になるが、基本的に人手が必要な事業ではない。

固定費を抑えつつ、事業拡大が容易に行える。

これは他のビジネスモデルでは考えられないことだ。

普通利益をアップさせるためには、人を雇ったり、在庫を抱えたり、新規店舗を出したり、リスクも右肩上がりで大きくなっていく。

今回の事業では、そういったことがない。

投資できちんとしたビジネスモデルを構築できると、これほどまでに凄まじいことになるのか。

その時の私は、今までの苦労が報われて束の間の達成感に酔いしれていた。

そして、ここまで資金が集まる仕組みを作れた自分に、誇らしさを感じていた。

今まで諦めずに頑張ってきて良かった。心からそう思った。

しかし、その喜びも長くは続かなかった。ここからKの言動に、少しずつ綻びが出始めたのである。

待ちに待った報酬受け取り日のはずが…

待ちに待った1月の報酬受取日がやってきた。

本当に長かった。

先月受け取った報酬は十数万円だったから、なかなか厳しい生活を強いられていた。

しかし苦しい年末を越えて、希望に満ち溢れた一年が始まったように感じていた。

今月は40万円以上の報酬を受け取れることになっていたし、翌月は50万円以上の報酬になる予定だった。

しかも右肩上がりで報酬は上がっていく。しばらくお金の心配をしなくても済むだろう。

通帳をバッグに入れて、意気揚々と家を出て銀行に向かった。

はやる気持ちを抑え、キャッシュカードをATMに入れてお金を引き出そうとした。

すると…

あれ?

…銀行残高が昨日と変わっていない。

ん?おかしいな。

すぐに通帳にも記帳したが、やはり昨日と残高が変わっていない。

どういうことだ??

今までKは支払関係で遅れたことは一度もない。

何か手違いがあったのかと思い、すぐにKに連絡を入れた。

K : えっ、振込みは実施しましたよ。

小川 : いや、入っていないよ。もう一度確認して。

Kは振込みをしたと言っているが、実際にはそれが反映されていない。どういう状況になっているかすぐに確認するように伝えた。

そして、お客様への利息も確実に支払われているのか、念のために確認するように伝えた。

しばらくしてKから連絡があった。

K:こちらでは送金の手続きはしています。入金はありませんか? 

再度通帳を記帳するが、残高に変化はない。

銀行の窓口にも確認したが、やはり送金された履歴はないとのことである。

おかしい。送金されたら普通は入金される。

考えられるのは、Kが送っていないか、送金元の残高が足りないか。

どちらかしか思いつかない。

こちらとしても半年間割いて、ようやく大きく成果が出始めたのだ。

ここで報酬が受け取れないなんて冗談にもならない。

この状況に違和感を覚えたので、すぐにKと会うことにした。

とにかく早急に事態を改善しなければ。

当時は蓄えもほとんど無くなっていたので、事態はひっ迫していた。

「早く何とかしなければ!」と気持ちばかりが焦っていた。

焦る気持ち。繋がらない電話。

それから報酬の入金の件でKに会おうと連絡をしたが、Kとの連絡が一向につかない。

電話もLINEも返答がない状態が続いた。

マジかよ!

一体どうなっているんだ?

焦る気持ちを抑えて、Kに何度も着信を入れた。

しかし、想いも虚しくコール音だけが鳴り響き、Kに電話は繋がらなかった。

さらに良くないことに、数日後には年明け最初の「投資ランチ会」を予定していた。

投資に興味がある人を集め、食事をしながらKが参加者の相談に乗るというイベントだ。つまりKがいなければ成り立たない企画である。

ここまで社債の購入を増やすことができたのは、投資セミナーと投資ランチ会の二本柱がうまく機能してきたからだ。

しかしこのまま連絡がつかなければ、投資ランチ会の開催自体が危ぶまれる。

くそっ!ふざけんな!一体何がどうなってるんだよ!

いきなり音信不通とかあり得ないだろ!

電話に出ろよ!!

願いも虚しく、その日Kと電話が繋がることはなかった。

 ・・・

 ・・・

第四話に続く

小川こうじ 公式LINE

小川こうじと直接繋がれる公式LINEへの登録はこちらから!お問い合わせもお気軽に!

※スマホなら最短2タップで友だち追加できます!