【第9話】 投資詐欺で2,300万円の損失を出した全貌を赤裸々告白

【第9話】 投資詐欺で2,300万円の損失を出した全貌を赤裸々告白

【前回の話】第8話

日本には、こんな諺(ことわざ)がある。

「急いては事を仕損じる」

慌てて急ぎ過ぎると、やってることが雑になったり、注意力が散漫になったり、失敗を招く要因が増える。

急いでいると時こそ、落ち着いて冷静に行動すべき。このような意味で使われる言葉だ。

確かにその通りだと思う。

しかし、人間には自分でもコントロールし難いほど感情が振り回されてしまうことがある。

その時の私は、とにかく焦っていた。

焦りから、Kへの苛立ちを抑えることができなかったのである。

これからKが債権者の皆さまに返済をするにあたって、弁護士に相談した方が良いという話になった。

Kは残高証明を作り変えて取引履歴を偽ってお金を集めていた。

そのため、いつ債権者の方から法的に訴えられるか分からない状況にある。

弁護士に相談することで、現実的に返済をしていくためのベストなプランを考えたかった。

「別に弁護士に相談しなくても良いのでは?」と疑問に思うかもしれないので、少しだけ当時のことを解説したい。

このような状況の時、とことん卑怯な人間であれば、破産して負債を全て帳消しにすることも当然考える。

しかし、詐欺行為でお金を集めて破産をしようと思っても、裁判所から『免責』は認められない。

※免責:返済義務が無くなること

自己破産して簡単に免責が認められるとしたら、詐欺行為であちこちからお金を借りまくり、どこかにお金を隠して自己破産すれば、手元に多額のお金が残ることになる。

実際にそういう悪いことを考える詐欺師もいるのであろう。

しかし、法治国家日本でそんなことは出来ない(余程うまく騙し通せば話は別かもしれないが)

さらにKには、簡単に自己破産という選択肢が取れない強力な制約があった。

それが「刑事告訴」である。

ピンとこないかもしれないので簡単に説明すると、たとえば正当な手順で出資を募り事業を興したとする。

その結果、事業に失敗して自己破産をしたのであれば、民法という法律に従って処理を進めていくことになる。

しかし「詐欺」となれば話は別である。詐欺事件は民法ではなく刑法で裁かれる内容になる。

つまり、警察が直接介入して被疑者を逮捕し、裁判の結果次第では懲役が言い渡される。

お金の返済=民法
詐欺行為=刑法

お金の返済と詐欺行為は分けて考えなければいけないのだ。

詐欺行為に対して刑事告訴をして実刑が下れば、返済される確率はさらに下がってしまう。

なぜならKが刑務所に入ることになれば、その期間はどう足掻いても返済はできないからである。

今のKは返済の意思を示しているため刑事告訴を免れているが、自己破産して債権を免責にしようとすれば、刑事告発をする債権者も現れるだろう。

債権者もお金が返ってくる見込みがあるならその方がいいに決まっている。

だから現状は刑事告発をしない。

しかし、返済を放棄したら債権者はKの詐欺行為に関して刑事告訴をすることができるのである。

今Kの目の前には、

・損失の返済
・刑事告訴

という選択肢が並んでいるのである。

当然Kも刑事告訴は避けたい。

そのため刑事告訴を避けられる現実的な返済プランで返済を進めていきたいのである。

しかし、私もKも法律面の知識に乏しいため、弁護士のアドバイスを受けつつ今後の返済プランを作りたいと考えた。

そこで事件後に弁護士と面談の約束を取りつけ、相談する機会を設けたのである。

弁護士への相談

弁護士との面談は当然私も同席し、今後のことを相談した(弁護士のことはO弁護士と記載)

私はO弁護士に今までの経緯と現状を伝えた。

Kが書面を偽造してお金を集めたこと。

お金を全て無くしたこと。

自己破産せずに返済したいということ。

状況を伝えたうえで、O弁護士にアドバイスを求めた。O弁護士は想像していたよりも若い弁護士であったが、真摯にこちらの話を聞いてくれる方だった。

しかし結論としては、期待していた以上のアドバイスを得ることはできなかった。

理由は「今のKでは返済プランを作ることができない」という点である。

返済プランを作るにしてもKに一定以上の収入がないとプラン自体を作ることができない。Kに土地や資産があれば話は別だが、当然そんなものはない。

弁護士が返済プランの相談に乗りたくても現状では何もできないという話であった。一定以上の収入があれば、そこから返済プランを作成し、債権者の皆さまに通知をすることができる。

全てのスタートはそこからになる。

返済プランができた後は、弁護士が返済状況を管理し、債権者の皆さまへの返済をサポートしていくことができるのである。

つまり、今のKはスタートラインにすら立つことができない状態なのだ。債権者の皆さまには誠心誠意説明して、もう少し時間をくれるように頼むしかない。

結局弁護士への相談は、厳しい現実を突きつけられる結果となった。

早くKの働き口を確保しなければ…

焦りは増すばかりであった。

募る苛立ち

弁護士への相談から数日が経過した。

しかし、いくらKを急かしても一向に職探しが進んでいる様子がない。

「今、履歴書を何社か送っています」
「面接の連絡をしています」

ということを言っているが、そこからの報告があがってこない。

遅い。遅すぎる。

全然事態が進展していかない。苛立ちだけが募っていく。

私も友人に高収入の肉体労働の職を聞いてみたが、条件の良いところが見つからない。

Kは「今、何社か候補はあります」とメッセージを送ってくるが候補の会社名などは記載がない。

LINEで送ってくる情報は相変わらず穴ばかりでレスポンスも遅い。

しかし、職探しが一向に進まない理由は、“ある人物”からの連絡で判明することになる。

この“ある人”からの連絡が決め手となり、Kとの連絡は完全に途絶えることになるのである。

Kの最後の嘘

私は思わぬところから“ある新事実”を知らされることになった。

その新事実を教えてくれたのは、Tさんという方だった。

Tさんは今回のKの運用にも多少の接点がある方で、Kに運用を任せるか悩んでいたが結局見送りになった方だった。

しかし、Tさんのご紹介で一人お客様を受け入れていたので、改めてTさんと今回の事件のことで話をすることになった。

こちらとしては、Tさんからご紹介頂いたお客様にご迷惑をかけたので、謝罪のつもりで会いに行った。

しかしその時に、Tさんの口から驚くべき事実が飛び出してきた。

「今、少額ですがKさんに運用を任せているんですよ」

…マジか。

その事実を聞いた時は、本当に驚いた。

Kは以前「株式投資で勝てる手法がある」と言っていた。

腕のあるプログラマーと組み、条件に合う銘柄を選定し、効率良く運用できる投資ツールを開発してもらったのだ。

その話は私も当然知っていたが、今回の事件が発覚してお蔵入りになっていた。

しかしKは、私に黙って再び外部からお金を集め、株式投資のツールを使い、こっそり運用を再開していたのだ。

どうりで事態が進展しないはずだ。

日中は運用をしているのだからロクに職探しもしていなかったのだろう。

その事実を知った時、私はただただ怒りの感情しか湧かなかった。

小川 : ちなみにどれくらいの額を任せているんですか?

Tさん : 70万円程度ですよ。

Tさんとの話が終わった後、私はすぐにKに電話をかけた。

完全に頭に血がのぼっている。

私は理性を飛ばさないように淡々とKを問い詰め始めた。

小川 : お前さ、俺に何か隠していることない?

K : いえ…

小川 : あのさ、俺、今日Tさんと話をしたんだわ。

K : ……

小川 : お前、今Tさんのお金運用してるんだって?

K : ……

小川 : はっきり答えろよ!Tさんの資金を運用してるのか、してないのか、どっちなんだよ!!

K : はい…

小川 : お前さ、今回の投資の損失は働いて返すって言ってたよな?それなのに、またお金を集めて運用してるって、何考えてんの?

K : ………

小川 :あれだけ投資をするのは認めないって、ずっと伝えていただろうが!こんなことやって、すぐにバレるって分からなかったのか!?

K : ………

小川 : なんとか言えよ!黙ってたら分からないだろうが!

K : ………

小川 : おい!聞いてんのか!?

K : ………

Kに話かけても一向に反応がない。

電話は繋がっているが、言葉も発さない無言状態である。

私は、そのまま1分ほどKを呼びかけ続けた。

しかし、Kから言葉が発せられることはなかった。

くそっ!ふざけんな!

またダンマリかよ!

Kは何のリアクションも返さない。仕方がなく私は自ら電話を置いた。

それからKが私の電話に出ることはなかったのである。

Kの新たな過ち

Kと直接電話が繋がらなくなったが、その日の夜にKからLINEでメッセージが届いた。

「ご迷惑をお掛けしておりますが、O弁護士と正式に契約を完了しましたので、債権の件はO弁護士を通してお願い致します」

まさか、ここまでやるとは…

Kは弁護士の陰に隠れて、事態をやり過ごすつもりのようだ。

このメッセージで私とKは、完全に敵対する関係となった。

今までKが債権者に訴えられないようにフォローし、スムーズに返済ができるようにアドバイスしてきたが、ここにきて完全に手のひらを返された。

小川 : 結局最後まで誠意ある対応がなくて、本当に本当に残念だわ。では、朝一でO弁護士と連絡を取って、今後の事を話し合うわ。

K : いえ、お一人お一人にお返事させて頂く時間がございません。当初より弁護士には依頼するとの方針はお伝えしておりました。

小川 : 君が誠意ある対応をしない限り、こちらは訴える方向で皆さんに呼びかけるし、ご両親や君の知人関係全てに情報は回していくからね。これ以上被害者を増やさないために。

K : 方針は弁護士に伝えておりますので、お尋ね下さい。

このメッセージのやり取りが行われたのは、2015年2月16日(月)22:25からであった。

これらは、Kから届いたメッセージの原文と私が送ったメッセージである。

O弁護士とのやり取り

Kが弁護士と契約をしたということは、こちらから直接Kに手出しができなくなったことを意味する。

Kが雲隠れをして、ほかの方から新たにお金を集めようとしているのに、こちらから何もすることができない。

本当に悔しい状況に陥った。

KはO弁護士にも損失分は返済すると伝えているようで、O弁護士はKの働き口が見つかり次第、返済プランを作成すると言っていた。

小川 : Kは運用で返済するつもりはないのですね?

O弁護士 : 本人はそのように言っています。

どうやら、弁護士にも働いて返済すると伝えているようである。

私はO弁護士とやり取りをする窓口になり、頻繁にO弁護士に連絡を入れた。

「返済プランはいつ出来上がりますか?」

「こちらも債権者の皆さまを待たせているんです」

「早急に返済プランの作成をお願いします」

弁護士を通してKにプレッシャーをかけて一刻も早く返済を始めるように促した。

私の怒りの感情は、O弁護士に向けられていくことになるのである。

Kの人間性

KがO弁護士と契約した直後に、Kと電話で話をした共通の知人がいる(ここではM君と記載)

M君は、Kと電話で話をした時の内容を教えてくれた。

Kは電話で、

「弁護士にお願いして本当に良かったわ」
「債権者との対応で投資に集中できなかった」
「これで投資に専念できる」
「実際、働いて5,300万円返すとか無理じゃね」

ということを話していたようだ。

私はできる限りKと共通の知人に連絡を取り、Kから連絡がきたら教えてほしいと伝えた。

すると、やはりKは、また外部からお金を集めて運用を始めようとしているようだった。

そんなことは絶対に認めない。

私はO弁護士に連絡をして、このように伝えた。

小川 : Kは働いて返済すると言っているんですよね?私とKの共通の知人から、Kがまた運用をしていると情報が入ってきてますよ。

もしかしてKの「働いてお金を返す」というのは、また運用を始めるという意味なのですか?

O弁護士 : いえ、私もそのような話は聞いていませんので、本人に確認しますね。

どうやら、Kも弁護士に運用のことは話をしていないようである。

Kは弁護士に丸投げしていて、きちんと情報の連携が取れていない。

味方になってくれる弁護士にも嘘をついているとは、もはや度し難いな。

小川 : もしKがまた運用をしようとしているなら、こちらも債権者の皆さまと然るべき対応をするので、よろしくお願いしますね。

O弁護士に恨みはないが、こちらも必死なのだ。

Kを動かすために、私はO弁護士にプレッシャーをかけ続けた。

O弁護士の決断

結局、O弁護士とやり取りをしてどのような着地になったのか?

結果は「O弁護士が契約を辞退」という形で幕を閉じた。

O弁護士とは何度も電話でやり取りをするのだが、Kに嘘と隠し事が多すぎるということで、O弁護士もこれ以上依頼を続けるのは困難だと判断したようだ。

「申し訳ございませんが、私とKさんとの契約は終了しますので、これからはKさんと直接やり取りをしてください」

結局Kは一番の味方になってくれる弁護士にも嘘をつき、たった一人で自分の身を護らなければいけなくなったのである。

その後のKの行方

O弁護士との契約がなくなり、Kと直接話し合いができる状況になった。

しかし、そこから事態はさらに悪い方に進むことになる。

Kが完全に行方をくらませてしまったのである。

電話も繋がらず、LINEの返答もない。Facebookも退会していた。

今までKが住んでいたマンションは、Kの両親がお金を出して退去してしまった。

しかし、現在の居場所は両親にも頑なに言わなかったようである。

Kの父親に何度も問い詰めたが「居場所は知らない」の一点張りである。

話をしているとKを庇っている様子もない。Kは両親にも居場所を言わずいなくなったのだ。

これは風の噂ではあるが、愛知県にいる可能性があるようだ。

最後の情報では、前の債権者IさんとKの共通の友人が、名古屋駅の近くでKと会っていたようだ。

しかしKは、その方にも働き先や住んでいるところは一切言わなかったようである。今現在、Kの正確な所在は分かっていない。

どこで何をしているかも分からない状況である。

今回の投資事業は、最悪の結末を迎えてしまったのである。

これからの選択

これから私達が取れる選択肢は、大きく分けて2つ。

一つ目はKを探しだして返済させる。

二つ目は弁護士を雇って訴える。

この二つになってくる。

現状では債権者の皆さまの意見も分かれている状態である。

・もうKを放っておいてもいい
・Kを見つけ出して返済させたい
・訴えてもいい

この3つの意見が出ている。

当然、Kを見つけ出して返済させたいというのが最も多い意見にはなっている。

この辺りは特別編で詳しく書こうと思っているが、Kが姿をくらませてから、私も個人的に弁護士に相談した。

私は手元に今回の事件の証拠になる書類を保管している。偽造していた残高証明や口座のお金の流れなどである。

それらを見せると弁護士は「これだけ証拠があれば訴えたら十分勝てる」と言ってくれた。

しかし、刑事告訴をして刑事罰を与えれば、Kが返済しなくなる可能性がさらに高くなる。

あちらを立てればこちらが立たず、である。

仮に今、民事で訴えて返済を求めても無い袖は振れないというように、Kにお金が無ければどうにもならない。

訴えるデメリットや労力を天秤にかけると、迷ってしまうのが当然である。

Kの誠意の結末

実は、Kはつい最近まで、雲隠れしながらも債権者の方達に損失の返済を行っていた。

返済額は、毎月損失額の0.001%ずつ。

つまり100万円の損失の方には、毎月1,000円ずつ返済をしていた。

毎月0.001%の返済を続けるのであれば、完済までに1,000ヶ月掛かる。

つまり83年と4ヶ月掛かる計算だ。

本気で返済しようとしているとは到底思えない額である。

だが、微々たる額でも返済をしているため、債権者の多くは様子を見ようということになっていた。

しかし、その入金も先々月分までしか確認が取れていない。

債権者全員の確認は取れていないが、どうやら先月の入金は無かったようである。

0.001%の返済も、一年も経たないうちに放棄してしまう始末。

当然、納得していない債権者の方もいらっしゃるので、今後どのようになるかはまだ何とも言えないところである。

Kに少しでも誠意があるなら、皆さんの前に出てきて謝罪してほしいが、そのようなことは望めないだろう。

何かしらの手段を使いこちらがKを見つけるか、刑事告訴をして警察に連行してもらうか。

そのようなことをしない限り、Kが自ら皆さんの前に出てくるとは考えにくい。

Kの投資詐欺事件は、いまだ未解決のまま時間だけが経過している。

Kは一体どこにいるのであろうか。

所在は分からないが、おそらくまた同じことを繰り返すつもりなのだろう。

誰かからお金を集めて運用し、資金を全て無くして音信不通になる。

それを繰り返し、関わる方達に迷惑をかけ続けるのだろう。

そう考えると、哀れな男だと思う。

彼のような生き方をしていて、幸せな人生を手に入れることは決して出来ないはずだから。

・・・

・・・

特別編につづく

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