【第7話目】 投資詐欺で2,300万円の損失を出した全貌を赤裸々告白

【第7話目】 投資詐欺で2,300万円の損失を出した全貌を赤裸々告白

【前回の話】第6話

最悪の一夜が明けて

悪夢のような事実発覚から一夜が明けた。

朝7時前に目が覚めた。

全然眠れた気がしない。しかし、のん気に寝ている場合ではない。

頭は回っていないが、やるべきことはハッキリしている。

すぐにお客様に連絡を取って、今後の対応方針を決めなければいけない。

しかし、対応方針と言っても何も思い浮かばなかった。

そもそもKはどうするつもりなのか、意思を確認する必要がある。

小川 : お前さ、これからどうするつもりでいるの?

K : お金は全てお返しします。

小川:どうやって?

K : 株式の取引で、成果が出せそうな方法があるんです。それで取引をすれば、返済していけると思います。

この発言を聞いたとき「こいつ本気で言ってるのか?」と耳を疑った。

小川 : お前さ、この期に及んで投資で返済しようと思ってるわけ?

K : はい。

小川 : 最初に言っておくけど、それは絶対に認めないからな。

K : …

Kが目を丸くして驚いている。

K : それはなぜですか?

Kの感覚は、俺の持っているモノサシとはかけ離れているようだ。

どうやら本気でまた投資をやろうとしているらしい。

小川 : お前は、人様に嘘をついてお金を集めて、それを全て無くしたばかりなんだぞ。詐欺行為をして2,000万円以上のお金を無くしているんだ。

そんなやつがまたお金を集めて投資をするなんて、筋が通るわけないだろ。俺が絶対に認めないからな。

それに、お前の取引履歴を見たけど、あんなクソみたいな取引しているやつが急に勝てるようになるわけないだろ。

お前さ、投資セミナーで、自分で言ってたよな。投資は損を小さくして、利益を大きく取るものだって。お前の取引見てたら、完全に逆だろ。利益は小さくて、損が圧倒的に大きい。

つまり、予想と逆に動いたら、しばらくしたら戻るだろうと思って放置して、結果損を大きくしてるし、逆に利益が出た時は利益を伸ばせずに待ちきれなくなって利益確定している。

それって素人と変わらないだろ。お前自身が、投資はメンタルが一番大事だって言ってたんだぞ。それを守れてないのは、お前自身だろ。

そんな三流以下のトレーダーが、2,000万円以上の損失を投資で挽回するって、宝くじで1等当てるようなもんだよ。そんなの認められるはずないだろ。

お金を返す意志があるなら、真っ当に働いて返せ。また自分で運用するつもりなら、そんなの全力で潰すからな。

K : …

Kは口には出していないが、完全に納得している様子ではない。

しかし、この状況でKに投資をさせるなんて馬鹿な話を許容することは絶対にできない。

そして、お客様からの入金状況を確認していると、あることに気がついた。

私が把握していないお金がKの口座に振り込まれていたのだ。

金額は250万円。数日前の入金になっている。

入金しているのは、つい最近社債を購入してくださったご夫婦だ。

そのご夫婦は、3口150万円分の社債を購入してくださっていた。

しかし、そのご夫婦から直近でさらに250万円の入金がある。

どういうことだ?

小川 : この250万円の入金なに?

K : …

小川 : こんな入金があるなんて、俺聞いてないんだけど。

K : ……

小川 : この入金なんだって聞いてるだろ!

私は再びKの胸ぐらを掴み、Kの顔をジッと睨んだ。

K : すみません……。後日追加で社債を購入したいとおっしゃって、資金を受け入れました。

小川 :お前本当になに考えてんだよ!このお客様の入金、つい最近だろうが!お前、もう運用が破綻しているの分かってて、それでも資金を受け入れたのか!?マジで人として終わってるだろ、それ!

この250万円の入金を含めると、トータルで約2,300万円の損失が出たことになる。

Kが隠していたこと。

Kの嘘。

それらが明るみになるたびに、怒りの感情を抑えることができない。何から何まで嘘で塗り固められた男に、私は情けないくらい騙され続けていたのだ。

だが、今振り返ってみる気がつくチャンスはあったのだと思う。私が見落としていただけなのかもしれない。

しかし私視点では、Kが発する言葉からは「嘘のにおい」が全然しなかった。

普通、人が嘘をつく時は何かしらの違和感が出るものだが、Kからはそういったものがほとんどない。

おそらく、本人も嘘を嘘だと思っていなかったのではないだろうか。

もしくは嘘をつく時の罪悪感が薄く、自然と嘘が出てしまうレベルなのではないだろうか。

もしそうであれば、長年嘘をつき続けていたということになる。

まさかここまで酷い男だったとは…

だが、ここで確認しなければいけないことがある。

小川 : 一つ確認だけど、ほかに何か隠してることはないのか?

K : いえ…

小川 : お前他で損失出してないよな?

K : ありません。

小川 : 本当に今回の件だけか?俺に隠れてほかの資金を受け入れてるんじゃないのか?これが嘘だったらマジで許さないぞ。

K : 本当にこれだけです。

Kの言葉を信じることはできないが、入出金記録に出てこないほかの損失を確認する手立てはない。

今は自分が巻き込んでしまったお客様の損失を何とかするしかない。

小川 : 2,300万円だったら、10年頑張れば何とかなる金額だ。俺もバックアップするから、コツコツ返していこう。

K : はい。

この状況では、自分がKを管理しながら返済させるしかない。

Kが姿をくらまさないように、まずは家の鍵を預かることにした。

ここからは思い出すだけで辛くなる激動の数ヶ月が待ち受けていた。

それを逃れる術などあろうはずもなかった。

お客様への謝罪

私とKは朝一で社債購入者の全員に連絡した。

お客様以外にも今回の事業で深い付き合いのある方には連絡を取り、直接会う約束を取り付けた。

これからひとり一人に会って事情説明をしなければいけない。

とてつもなく気が重い。

いや、気が重いのは通り越して、恐怖を感じるレベルだった。

自分を信頼して社債を購入してくださった方に、

「すみません、運用に失敗しました。預かっていたお金は全て無くなりました。

そしてKは嘘をついていました。Kは、本当は運用で負け続けていた詐欺師トレーダーです。銀行の残高証明も偽造していたので、本当はプール金もありません。

今預かっていた資金は全て溶けてしまっているので、お返しできるお金がありません。ごめんなさい」

この事実を伝えなければいけないのだ。

年明けの幸せの絶頂から、一気にどん底まで転落したのだと実感した。

大きな城を建てようと頑張ってきたが、私は砂の上に城を作ろうとしていたのだ。

私が組み立てたものは、突如いとも簡単に崩れ去ってしまった。

今回の運用事業に一番多く資金を出してくださった方は、総額600万円にも及んだ。

つまり、600万円の損失を与えてしまったということになる。

詫びて済む話ではない。

小川 : お客様には事実を全て伝えるからな。

K : はい…

その日は平日ではあったが、多くの方とアポイントが取れて直接会うことができた。

状況説明は、ほぼ全て私が行った。

今回の運用が失敗したこと。

預かっている資金が全て無くなったこと。

Kが本当は負け続けている三流以下のトレーダーだったこと。

残高証明はKが偽造していたこと。

プール金も存在していなかったこと。

今までの経緯を打ち明けた。

事情説明は私がしていたので、Kはほとんど無言の状態だった。

合間合間に謝罪で頭を下げるが、Kから積極的に事情説明はしなかった。

当然、購入者の多くは怒りの感情をKにぶつけた。

「どうしてこんなことしたんですか?」

「悪いとは思わなかったんですか?」

「これって詐欺ですよね」

私も巻き込んでしまった立場の人間なので、知らなかったでは済まされない。

私に対して怒りをぶつける方はいなかったが、

「小川さんを信用して出したのに」

「もっと早く気付けなかったんですかね」

というお言葉が出てきた。

当然のことだ。本当に申し訳が立たない。

私はお金と一緒に信用まで失ってしまったのだ。

集めたお金はどのように消えたのか?

お客様に事情説明を行ったがここから大きな仕事が待っていた。

・これからどうやって損失を補填するのか?
・集めたお金はどのように消えたのか?

この二点を明確にする必要がある。

損失補填に関しては、正直良いアイディアがなかなか出なかった。

Kは今まで投資しかやってこなかったため、一般的な会社に勤めて長く働くのは非常に難しい状況であった。

一般常識もない。コミュニケーション力も乏しい。他に特殊なスキルがあるわけでもない。

Kにはどこかの工場で肉体労働をさせるか、マグロ漁船に乗ってもらうしかないと本気で考えた。

ほかにも、集めたお金がどのように無くなったのかを知る必要がある。

もしかすると、Kがどこかにお金を隠し持っている可能性もある。そうであれば、Kは目を離した隙にお金を持って逃亡するかもしれない。

お金の流れを明確にして正確に状況を理解する必要があった。

まず行ったのは、Kが持っている銀行口座を全て確認することだった。

案の定、Kはいくつかの口座を所有していたので、その全ての残高を確認していった。

銀行に付いていき、口座の入出金履歴を全て記帳させた。しかし、まともに資金が入っている口座はどこにもなかった。

Kがお金を隠し持っているのではないかとわずかな希望を抱いていたが、Kの口座にはほとんどお金が残されていなかった。

気の遠くなる領収書整理

次に、Kの持っている領収書整理を行った。

銀行口座の入出金の記録を確認すると、Kが口座から直接現金を引き出している記録がある。

もしかすると引き出した現金をどこかに隠している可能性もある。もし現金を直接隠しているとしたら、その行方も付き止めなければいけない。

幸いにもKは一緒に買い物をするとき、必ず領収書をもらっていた。領収書を整理すれば、直接口座から引き出された現金がどのように使われたのか分かる。

領収書の金額と直接引き出した用途不明金の差額がかけ離れていたら、Kはどこかにお金を隠している可能性が高い。

入出金の記録からKが個人的に引き出した用途不明の金額も分かっていた。

逆に用途不明の金額と領収書の金額が合ってしまうと、手元に資金が無いことを意味する。

どちらの状況も考えられるので、まずは用途不明金の行方を付き止めなければいけない。

そんな状況だったので、Kが支払いのたびにもらっていた領収書を整理し、金額を確認する必要があった。

ただ、以前にKは「会計は顧問税理士に全て任せている」と言っていた。もしかしたら手元に領収書はないかもしれない。そう思っていた。

しかし、話を聞いていくと顧問税理士なんて存在しておらず、Kはもらってきた領収書をぐちゃぐちゃに保管していた。

紙袋に無造作に入れられた膨大な領収書を見たとき、私はKの本質が現れていると思った。

こんなに適当でガサツな管理をしていたのか…

私とKは、社債を集め始めた時期の領収書を振り分けてエクセルに入力していった。

気の遠くなる作業であったが、一枚も見逃さないように入力を行っていった。

Kが隠し持っていたお金

時間は掛かったが、領収書の整理でお金の流れは把握できた。

領収書を整理した結果、不明金は約20万円程度であった。

初期に集めたお金は運用の失敗で無くなり、中盤から集めたお金は「社債の利息」と「Kの生活費」として使われていた。

私は領収書整理で何度もブチ切れた。

領収書整理で、Kがバーや飲み屋でかなりの額を使っていたことが分かったからだ。

人を騙して預かったお金で運用に失敗して、さらに度々豪遊している。

「お前、どういう神経してるんだ?」

真夜中、領収書をエクセルに打ち込みながら、私は何度もKを怒鳴りつけた。

しかし、いくら怒鳴ったところでお客様から預かったお金は返ってこない。

そう思う度、虚しさが込み上げてくる。

私が把握している損失額は、約2,300万円。

用途不明金約20万円。

Kがマメに領収書を貰っていたと言っても、全ての会計で領収書をもらっていたわけではないだろう。

そう考えると、用途不明金の20万円もほとんど残っていないと考えられる。

つまりKの手元にはお金が残っていない可能性が極めて高いということが分かった。

しかし、これで終わりではなかった。

領収書整理をしてから間もなく、私が知らなかった新事実が発覚することになる。

この新事実は、私をさらなる地獄に突き落とすことになるのである。

・・・

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第八話に続く

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