【前回の話】第11話
「なんでネットワークビジネスなんかやる人がいるのか理解できない」
このように考えてる方もいるかもしれない。
僕も気持ちは理解できる。しかし、むやみやたらに批判して欲しくない。
なぜなら、ネットワークビジネスで人生を変えた方も実際にいるからだ。
世の中には、金銭的に苦しい思いをしている方は想像以上に沢山いる。世の中の全員が高学歴で給料の良い職場に勤め、順風満帆な生活を送っているわけではない。
否応なしに借金が膨らみ、どうにもならなくなる方もいるのだ。
しかし学歴や資格、実績がない方は、職業の選択肢も限られてくる。そういう方がたどり着く最後の砦がネットワークビジネスだったりするのである。
自分のため、家族のために本気で人生を変えようとがんばっている方もいる。
そんな方に向かって「ネットワークビジネスはやめた方がいい。成功できるわけがない」と、考えなしに言う方もいる。
だったら、ほかにどうしろと?
そのセリフは、相手の立場を真剣に考えたら、安易に言えることではないはずだ。
あなたが僕の人生の面倒をみてくれるわけじゃないのに、無責任なことを言うなよ。
そう思う。
選びたくても他の選択肢が無い場合だってあるのだ。
僕はいつも感じていたことがある。ロクにやったこともなくて話も理解していない人が「成功できるわけがない」と言うことだ。
そう思っている人はできないと思うが、実際に結果を出している方もいる。
目の前の人が成功する確率が1%でもあるなら、根拠もなく批判するのは失礼だと思う。
主婦で、子育てをしながら家計を支えるために収入を増やしたいと考えている方なら、隙間時間でパートをするくらいしか稼ぐ方法がなかったりする。
そういう方が
「人生を変えるために」
「家計を支えるために」
「借金を返すために」
「子供の教育費のために」
「老後の生活費のために」
真剣な気持ちでネットワークビジネスを始めることだってあるのだ。
「なんでネットワークビジネスを?ほかのビジネスをやればいいじゃない」
そう言われても、全ての選択肢を検証する時間なんてない。
事実そんなことは不可能だ。時間が足りな過ぎる。良さそうと思う仕事に、全力を尽くすしかないのである。
今、目の前にある選択肢の中で、人生を変える可能性が一番高いと思って、その方はネットワークビジネスを選んでいる場合もあるのだ。
そもそも事業というのは、失敗確率が高い。仮に飲食店をやるとしても、20年で99%のお店は無くなる。
しかし、成功し続けているお店も存在している。全ての方が成果を出せないわけではない。
それなのに、単なる先入観でその人の可能性を決めつけて否定するのは、失礼なことだと思う。
確かに、僕のように尻尾を巻いて逃げる人もいるので、気持ちは分かる。
もし仮に、僕がまたネットワークビジネスをやると言ったら「お前は無理だよ」と言ってくれて構わない。
しかし、ほかの方の場合は、ひとまず温かく見守ってても良いのではないだろうか。
何かの事業をやる際は、大なり小なりリスクを抱える。お店を構えたり、大きな投資が必要な事業よりは、低リスクなビジネスだろう。
もしネットワークビジネスが嫌いだったり、不快な勧誘をされてしまったら「私はあなたの伝え方で嫌な気持ちになった」と伝えるのが良いと思う。
やり方やマナー違反を伝えるのは、今後の相手のためにもなる。
しかし、その不快な感情と結び付けて「成功できない」という風に言うのは、違うのではないだろうか。
僕はそう考えている。
僕にとっては、沢山の経験を積ませていただいたネットワークビジネス。
その経験もいよいよ終盤戦に突入していくことになるのである。
小川の葛藤
Yさんからの提案を受けて僕はかなり迷った。
当然だ。
M社で関わってきた皆さんとの人間関係もある。それにネットワークビジネスでは何度も挫折してきている。
心から燃えるような情熱が出てこない。しかし、強い興味はあった。
ネットワークビジネスのプロから、ビジネスのやり方を学びたい。
そう思った。
Yさんにセミナーに誘われて、僕は参加することを決めた。
ビジネスに関しては、その時は「やらない」気持ちの方が強かった。
しかし、ネットワークビジネスのプロがどのような仕事をするのか。
現場はどのようになっているのか僕は見てみたいと思ったのだ。
僕はいつも好奇心が止められなくなってしまう。
今振り返ると、節操がないところを強く反省している。
F社のナイトセミナーに参加
セミナー当日。
Yさんの提案でセミナーに参加することにした僕は、セミナーが行われるエルプラザに向かった。
セミナー会場は、2階の環境研修室。かなりの人数が来ていた。
年齢層が高いと聞いていたが、夜のセミナーだったので若い人が多い。
20代と思われる方も結構参加していた。
セミナーは二部構成で前半が製品説明。
後半にビジネスの説明であった。
製品説明は、カイロプラクティックを本業にしている方が説明をしてくださった。
そしてビジネスの説明。
ネットワークビジネスの基本的な説明から始まり、F社の特徴やビジネスプランの詳しい説明をしてくれた。
一度Kさんから話を聴いていたので、ある程度のことは頭に入っていた。
F社の製品は、核酸という栄養素をウリにした健康ドリンクである。
F社の核酸ドリンクに関しては「ただの砂糖ジュース」「核酸は取り過ぎると体に悪い」などネガティブなことを言われることがある。
しかし、現場で色々な方に話を聞かせていただいたが、ご年配者の愛用者には体感を持っている方が多かった。
ただの砂糖水で、ここまで体感が出るものなのか。
プラシーボ効果があるとしても、それだけの理由とは考えにくい。
「登録しているメンバーが自社製品を批判するわけがない」
僕が話を聞いたユーザーは、ビジネスとは一切関係ない純粋な愛用者である。
僕とは利害関係も無ければ、会社のビジネスとも関係ない。その方達が嘘をつくとは思えない。
しかも、かなり人数に話を聞いたうえで感じた見解をお伝えしている。
もちろん全員に体感があるわけではなかったが、多くの方が製品を気に入っていた。
この話を信じるも信じないもあなた次第ではあるが。
「自分がビジネスをしている会社を一番だと思いたい」
その気持ちが強くなるゆえに、他社批判が多くなってしまう業界である。話半分で聞いていただいて構わない。
ただ、僕はすでにF社を退会しているし、利害関係は一切ない。F社を無理に持ち上げる理由もない。
自分が感じたことを嘘偽りなくお伝えしたいと考えているだけだ。
その点はご理解いただけるとうれしい。
僕が参入した時、F社は15年目の会社だったが、定期的に製品もバージョンアップを繰り返して品質を上げていた。
その辺りの企業努力も信頼できると感じた。
健康ビジネスの業界では「エビデンス」という言葉が頻繁に使われる。
※エビデンスとは科学的な根拠、証拠という意味
「核酸を摂り過ぎると身体に悪い。そういうエビデンスがある」という方もいれば「多く摂り過ぎた核酸は、体外に排出されるから心配ない」という方もいる。
この辺りの判断は、難しいところだ。どんな栄養素も摂り過ぎたら害になることが多い。
しかし、核酸に関しては過度に摂り過ぎを心配する必要は無いと考えている。なぜなら、現代人は核酸の摂取量が足りていない。サプリメントで補った方が良い人は多いようだ。
もちろん、個人差や体質もあるので、全ての人に当てはまるとは断定できない。自分の場合は「試してみるのが手っ取り早い」と考えるタイプだ。
色々と調べるのも大切だが、時には行動してから結果を検証した方が早い時もある。
ネットワークビジネスでは、特にそういう姿勢が大事だと感じている。
Yさんと交わした約束
少し話が逸れてしまったので本題に戻ろう。
F社の製品説明とビジネスの説明を聞いてみて、僕には「実際にやらないと分からないな」という気持ちが湧き上がってきた。
「お世話になったM社の人に申し訳が立たない」
「今更ネットワークビジネスをやってうまくいくのだろうか…」
「コロコロと会社を替えてたら、周りの人にどう思われるだろう」
色々な葛藤と感情が入り乱れた。しかし最終的には「チャレンジしてみよう」という気持ちになったのである。
セミナーが終わった後、Yさんと二人で少しだけ話をした。時間が無かったので、5分ほどしか話ができなかったと記憶している。
そこで僕は「ビジネスをやる」ということを伝えた。
しかし、そこで僕は2つYさんにお願いをした。
1つは、ネットワークビジネスの「仕事のやり方を教えてほしい」ということ。
2つ目は「僕が直接声をかけたビジネスメンバーには、収入を取らせて欲しい」ということ。
この2つをお願いした。
Yさんがこの約束を覚えているか分からないが、Yさんはきちんと約束を守ってくれる方だったと、後々分かることになるのであった。
F社のビジネスに参入
さすがに4社目なので、最初の動き出しは慣れたものである。
アポイントを取りまくって、個別プレゼンでYさんに繋げる。
これの繰り返しである。
Yさんは、グループの方から沢山の個別プレゼンを頼まれていてスケジュールがビッシリであった。
しかし「真剣にビジネスをやるなら優先してスケジュールを空ける」と言ってくれた。
最初は「本当かな」と思ったが、僕が個別プレゼンのお願いをすると、9割以上の確率で日程を空けてくれた。
約束を守ってくれて、とても信頼できる方だと思った。
しかし、ビジネスをスタートしたが心の中に引っ掛かりもあった。
心の底から湧き上がるような情熱が出てこない。何かが心にブレーキをかけてしまう感覚がある。
この感情を克服しようとずいぶん苦労したものだ。僕は自分の気持ちにムチを打って、行動量を増やすように心がけた。
以前と変わらず、僕のメンタルは徐々にすり減っていくことになるのであった。
F社の戦略
F社は、他の会社と比べていくつか特徴があった。
まずは登録者の年齢層。
僕が参入した時、F社の登録者の平均年齢は60歳を超えていた。
ご年配者の層から支持を得て拡大してきた会社である。
そしてリピート率。
これも約9割もあり、継続率が非常に高い。
F社は、ビジネスメンバーがビジネスをしやすいように様々な仕掛けを用意してくれる会社であった。
まずは無料サンプル。
普通、ネットワークビジネスをしていると、お客様に配る製品のサンプルは自腹で用意しなければいけない。
しかしF社の場合は、セミナーに参加してくださる方に、サンプル用のミニドリンクを用意してくれる。
しかも気前の良いことに一回限りではなく、セミナーに参加する度に何回でもサンプルをもらうことができる。
無料サンプルを会社が用意してくれるおかげで、ビジネスメンバーの負担が減る。
そしてお客様をセミナーに動員する際も「無料サンプルが貰える」と声をかけやすい。
さらに招待旅行。
通常、ビジネスメンバーにしか招待旅行はないものだが、F社は愛用者でも招待旅行に行けるチャンスがあった。愛用者を喜ばせる仕掛けが随所に施されていたのだ。
こうして愛用者から支持を得て15年間売上を落とすことなく、右肩上がりで伸び続けてきた会社なのである。
F社の説明を聴いていて「愛用者を大切にしている会社」と感じた。
そういう会社の姿勢は、非常に好感が持てるものであった。
ネットワークビジネスの本質
以前の記事でも書いているが、僕はネットワークビジネスは「権利収入」だとは思っていない。
しかし継続収入という性質はあるので、なかなか自分の中でしっくりくる言葉が見つからなかった。
そんな時、Yさんが僕の疑問を解いてくれた。
Yさんは、
「俺はネットワークビジネスを権利収入や不労所得だとは考えていない。報われる労働収入だと思っている」
このように表現していた。
僕はその通りだと思った。本当にしっくりくる言葉であった。
誤解を招きたくないのだが、決して悪く言っているわけではない。
この「報われる」というのが、非常に重要なことだ。
一般のサラリーマンやOLでは、自分のがんばりがダイレクトに収入に反映されるわけではない。
自分のがんばり次第で人生を豊かにできるという点では、ネットワークビジネスは大いに「報われる」可能性があるのだ。
ネットワークビジネスの会社選びのポイント
ネットワークビジネスをビジネスとして取り組む際、会社選びは非常に重要だ。
これは僕個人の見解だが「愛用者を大切にしない会社」は、長期的に反映しないと思っている。
なぜなら、会社の売上を支えてくれるのは、愛用者だからである。
通常、ネットワークビジネスの会社に参入する人の割合は、ビジネス目的が8~9割、製品目的が1~2割である。
コンビニで例えると、お客さんが1~2人しか来ていないのに、8~9人の店員がいるということだ。
そして、その店員もお店から商品を継続的に購入して、売上を作り出している。
この状況は、バランスがおかしいと思う。普通のビジネスは逆である。お客様が8~9人に対して店員が1~2人であるはずだ。
お客様が買い物を続けてくれるから、会社の売上は伸びていくのである。世の中の会社を見渡しても、そうなっているはずである。
ビジネスメンバーは、稼げなければやめてしまう。そうなると流通が崩れてくる。
しかし、製品が気に入っている愛用者は、稼げようが稼げまいが製品を買い続けてくれる。
このような方が多くなければリピート率が高くなり、崩れにくい流通網になっていく。
愛用者を大切にせず、ビジネスメンバーばかりに購入負担を増やすような会社は、衰退していくことだろう。
だから愛用者の割合が8割に満たない会社には、参入すべきではないと思っている。
モメンタムが過ぎた後は、売上が急激に下がることは目に見えているからである。
Yさんの仕事量
Yさんは、本当によく働いていた。
多い日は1日10プレゼン以上。
グループからABCの依頼が沢山くるので、スケジュールはびっしりである。
こんなに働くリーダーは、見たことがない。Yさんは、それくらい現場をこなしていた。
Yさんの活動を見ていて非常に印象に残ったことがある。
それは「事前の段取り」だ。
大きな会場ミーティングを開催する場合、Yさんが仕切ることが多かった。
その段取りを見ていると、凄まじい。
言葉は悪いが、引くくらい細かく段取りをしている。トップリーダーは、こんなことを見えないところでやっているのか。
Yさんの活動に照らし合わせると、自分なんて全然仕事をしていない。
Yさんは自分のことを「ネットワークビジネスサラリーマン」と表現していた。まさにその通りだと思った。
朝から晩まで懸命に働いている。
ある程度の結果が出たら、手をゆるめるリーダーが多い中、一切手をゆるめることなく、グループのメンバーが結果を出せるように動いていた。
その姿勢は、本当に信頼に値するものだった。今でもYさんを尊敬している。
ただ、僕はその姿を横で見て、モチベーションが下がってしまった。
「自分に真似できるだろうか」
そう思ってしまったのだ。
Yさんはネットワークビジネスに情熱を持っている。
しかし、僕は…
結局、その感情を拭い去ることはできなかったのである。
・・・
・・・
第13話につづく