【前回の話】第2話
前回のあらすじ
ネットワークビジネスをやる気がなかった小川だが、A社の成功者Oさんに言われた一言でビジネスをやる気になる。
「このビジネスは人間としての器を磨けるビジネスなんだよ」
この一言が決め手になり、ビジネス活動をスタート。
小川は「いばらの道」を選択することになるのだった…
後悔を未然に防げたら、どれだけよいだろうか…
人生には予期せぬことが多々起こる。
それは、避けられない事態で起こることもあれば、事前の予防で防げることもある。
しかし、僕がネットワークビジネスで体験した出来事はどうなのだろう。
事前に防ぐことができたのだろうか。それとも痛い思いをしなければ分からなかったのか。
今となっては過去のことだが、当時の僕には自分の勘の悪さを嘆くことしかできなかった…
A社に会員登録。そして…
自分の選択と決断次第で、世の中の現象は驚くほどのスピードで変化していく。
僕が「A社のビジネスをやる」と言ってから、急速に話が進んでいった。
G君からA社のビジネスプランを聞いたときは、聞く気が全くなかったので、内容が全然頭に入っていなかった。
「そもそもどんなビジネスなんだ?」
僕の理解度を深めるために、OさんがA社のビジネスプランをもう一度丁寧に説明してくれた。今回は、ちゃんと聞く気になって話を聞いたのである。
すると、そこで「権利収入」という単語が耳に飛び込んできた。おそらくG君もその説明をしてくれていたと思うのだが、僕の記憶には一切ない。
そもそもネットワークビジネスをやる人の動機No1と言ってもいいのが「権利収入を得るため」だと分かった。
なるほど。権利収入ね。
※正しくは「権利的な収入」なのだが、分かりやすくするため「権利収入」で統一。
僕はビジネス作家の本田健さんが好きだったので、何冊か本を読んだことがあった。その中で「不労所得」という概念が出てきていたが、それに近いものだと感じた。
Oさんは「不労ではない」と説明をしていたが、その時は権利収入と不労収入の違いもイマイチわかっていなかった。
ネットワークビジネスを一言で表現すると「流通を作る仕事」と言っていいだろう。
自らの口コミで流通を拡大していく。その際に、自分発信で始まった流通から多段階まで及んで報酬が発生していく。そのため自分以外の人が口コミをして流通が拡大しても収入が増えていく仕組みだ。
こうして自分以外の人の力も借りて、チームプレイで流通を拡大していくビジネスなのだ。
※報酬プランにまで話が及ぶとここでは書き切れないので割愛。
しかし、流通網の作り方が、学校などでも習う「ねずみ講」に酷似しているため、ネガティブな印象を持つ人が非常に多いのである。
あと、ネットワークビジネスを「マルチ商法」「マルチ」と表現する人もいるが、正式には「マルチレベルマーケティング」という呼び方をする。
略してMLMである。
マルチレベルマーケティングのマルチを取って「マルチ商法」と言う方が非常に多い。そう呼ぶ方の大半は、悪い意味合いで言うことがほとんどである。
「あー、マルチね」
ビジネス経験者は、一度は言われたことがあるセリフだと思う。
「マルチはマルチですが、マルチレベルマーケティングです」と解説しても「そんなのどっちでもいい」というリアクションをされる。
確かに言葉はどうでもいいのだが「悪徳マルチ」と「マルチレベルマーケティング」は全く別物のビジネスだ。ビジネス経験者としては、その辺りは理解してほしいという気持ちがある。
なんでも思考停止になって一緒くたにしてしまうと、本質が見えなくなってしまう。
ネットワークビジネスとねずみ講の違いが分からない方向けに説明用のページも用意した。
すでに理解している方は、そのまま読み進めて頂きたい。
消耗品を扱う会社を選ぶ
ネットワークビジネスの会社を選択するうえで、非常に重要なポイントがある。
それは「消耗品を流通させる」ということだ。
ビジネスモデルの性質上、耐久消費財などのリピートしない製品を扱うと、大変な目に遭うことが多い。
ネットワークビジネスでは口コミによって流通網を作り、お客様が製品を買い続けてくれる限り、自分に報酬が入り続けることになる。流通が維持されれば、自分が何もしなくても報酬が入り続けるのだ。
これが「権利収入」と言われる所以である。
権利収入が増えていくと「時間の自由」を手に入れることができる。
朝から晩まで会社に行かなくても、毎月安定した権利収入があれば、それだけで生活することも可能だ。
「経済的な豊かさ」と「時間の自由」。普通に働いているだけでは、手に入れるのが非常に困難なものをネットワークビジネスでは手に入れられる可能性がある。
特に僕は「時間の自由」を手に入れたいと思っていた人間なので、時間の自由が手に入る権利収入に心を動かされた。
そして、その権利収入の仕組みを構築するために、継続的にリピートする消耗品を扱う必要があるのだ。
高額な耐久諸費財なら、販売して高額の紹介料をもらえるが、それは単発の収入で終わってしまう。つまり耐久消費財を扱う時点で、メリットが激減するのである。
A社の場合、流通させる製品は「日用品・サプリメント・化粧品」である。基本的には誰もが使う消耗品だ。
そのため無くなったら必ずまた買う。次もまた買う日用品だから、毎月継続的に売上があがり続けることになる。
A社のビジネスをシンプルに考えると「口コミで日用品の流通網を作り、継続的に製品を購入してもらい、流通網を拡大していくビジネス」。このように捉えることができる。
何はともあれ、A社のビジネスをがんばれば権利収入が手に入るのね。オーケーオーケー!
僕は単純にそう考えてしまった。
Oさんのビジネス説明ではこちらは聴く気になっているので、G君の時では分からなかったことに色々気づくことができた。
そして、製品の説明なども色々として頂いた。
当然だが、A社の製品がいかに素晴らしいかを聞かされることになった。
分かる人は分かると思うが、洗剤の実験などは有名だと思う。
サプリメントに関してもなぜ粒が大きめでニオイがあるのか?
無農薬のオーガニック素材を使って余計な凝固剤を使っていないから、必然的に粒が大きくなってしまう。
そういう説明を聞くと、こだわって作られているものだと感じた。
今振り返って思うが、あのような環境にいたら製品を盲信してしまう。
人間とは流されやすい生き物だ。
周りの人が皆、A社の製品を「最高の製品」と称えていたら「そうなのかな」と思ってしまう。
集団心理にハマっていたのだろう。
振り返ると、良い製品も沢山あったと思うのだが、オーバートークも多かったと感じる。
そしてOさんから一通りビジネスや製品の説明を受けたあと、驚くべきことを言われた。
「最初は自分で説明するな」と言うのだ。
この本質的な意味を僕は最初理解できなかった。
説明できるようになるために教えてくれているのではないのか?
確かにそうなのだが、最初から自分で説明してしまうと、失敗する確率が非常に高いのだ。
はっきり言って、初心者でいきなり上手に説明できる人は、思った以上に少ない。
特に営業経験もなく人に何かを伝える仕事をしたことがない場合「よく分からない説明」になることが非常に多い。
ビジネスを開始した初期では自分もよく理解していないのに、よく理解していない人に説明をする。それで正しい情報が伝わるわけがない。
ただでさえネガティブなイメージが先行している業界だ。相手も聴く耳を持って話を聴いてくれるとは限らない。
さらにネットワークビジネスでは基本的に友人、知人、家族などに話をしていくことになる。
その場合、自分への信用度が低いと、なおさらうまく話が伝わらない。
これらの理由から、最初はきちんと説明ができる上位者に繋いで話をしてもらった方が、失敗する確率が低いのである。
自分で全てを説明しようとしてドロ沼にハマるくらいなら、アップラインに繋いでビジネスをうまくいかせた方が確かに良い。
※アップラインとは
上位者。先に始めた人のこと。
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「なるほど。そんなものなのかね」
当時の僕はよく理解していなかったが、とりあえず言われたようにやってみようと思った。
こうして一通りの説明を受けながら、僕はビジネス活動をスタートさせたのだった。
では、次回はいよいよ小川の現場での体験を伝えていこう。
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第四話につづく